第三章

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「もう、いいよ亮太。」 「もういいって…何が?」 「あたしに無理に付き合わなくても。今好きな子と、うまくやって。」 「…でも、仕事とか…困ってるんだよね?」 「選ばなきゃ、働けるわ。」 「どういう事?まさか、夜の仕事とか?」 「それもありかなって。」 「ダメだよ。やめなよ。俺がいやだ…」 「亮太…あたしは大丈夫だから。とりあえず、引っ越そうと思うの。家賃もうんと安くて…今までの自分は捨てなきゃね。」 「…朝子さん…」 「最後に、部屋に来る?」 「……」 亮太は無言だったけど、あたしについ て部屋に来た。 「…ここに一人で住んでたの?」 部屋に入ってすぐ、亮太は呆れたような声で言った。 「贅沢でしょ。バカよね。別れた夫と弟に負けたくなかったの。生活水準を下げる事は、負ける事だなんて、どこかで錯覚してた。」 「……」 「ただの負けず嫌いよね。」 亮太は心揺れている。 あたしを背後から抱きしめて。 「朝子さん…ほっとけないよ。こんな状態だなんて…」 切なそうな声で言った。 「大丈夫。あたしは、あなたより大人だもの。」 そうよ。 あなたより、ずっと大人でしたたかでズルい女よ。
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