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第八章
「朝子ちゃん、今日は三時でお店閉めるわ。それと、水・木と臨時休業にさせて。」
火曜日の朝、突然店長がそう言った。
「え?何かあったんですか?」
「遠方の親戚に不幸があって。幸い明日は定休日だからいいけど…木曜日、もしかしたらまだ帰って来れないかもしれないの。」
「…そうですか。」
「ごめんなさい。金曜日から来てもらえる?」
「分かりました。じゃあ、金曜日に。」
「ごめんなさいね。」
もう一年以上働いているのに、任せてもらえない。
正直、ちょっとストレスではある。
あたしはもっとできるはず…って、自信過剰なあたしが欲を出す。
午前中、残ってる花をどうにか売ろうと、小さな花束をたくさん作った。
お昼休みに出てくる人の目にでも留まれば。
会社の机に、癒しアイテムとして一つどうかと勧められる。
「朝子さん。」
呼ばれて振り向くと、亮太がいた。
「…いらっしゃい。」
花束を作りながら、亮太に近付く。
…車、野田さんの店の近くに停めたんだろうか…
なぜか亮太はこれ見よがしに、野田さんの店の前を通るようにしてここにやって来る。
「可愛いね、それ。」
「でしょ?会社の机にどう?」
「俺はほとんど外に出てるから。」
「……そうね。」
「近くに用があったから…ランチでもどう?」
「今日三時までだから、時間が少しズレるの。」
「三時まで?」
「店長の親戚に不幸があって。」
「そっか…それは大変だね。じゃ、また今夜。」
「うん。」
亮太を見送って、再び花束作りに集中する。
普段は人通りが少ないんだけど、昼休みになるとどこから湧いて来たのかと思うほどの人混みになる。
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