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第三章
「…できてる…」
トイレで独り言。
妊娠検査薬のそれは、ハッキリと妊娠を告げていた。
あたしは、妊娠している。
子供が欲しかったわけでも、欲しくなかったわけでもないけど…純粋に嬉しいと思った。
相手が亮太でも。
ただ、亮太にそれを告げて結婚したいとか、そういう気持ちは浮かばなかった。
「話って何?」
亮太の彼女は日曜日も働いてるし、休日を持て余してるに違いないと思ったあたしは、彼を呼び出した。
案の定、亮太は嬉しそうな顔で約束のカフェに来た。
「あのね…」
「うん。」
「あたし、今…仕事してないの。」
「えっ?」
カップに口をつけようとして、亮太はその手を止めた。
「どう…して?」
「実は、もう半年ぐらいしてないの。あたしもなぜか分からない。仕事が急に来なくなって…」
「来なくなって?」
「悪い噂がたってるから、仕事させられないって。」
「悪い噂って、どういう…?」
「分からないの。誰もハッキリ教えてくれないし…」
「…あの男の人との事とかじゃ…?」
亮太は、しどろもどろ。
あきらかに動揺している。
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