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全く話の内容は理解は出来なかったが、彼は解っていた。
此処は夢に餓えたる“都市”の胃袋。そして彼等は“都市”と言う名の牢獄に囚われた夢の囚人。
(願わくば――どうか我々を夢の牢獄から解放してくれ……)
ふと彼は、いつもの寝所に立っている事に気が付く。もう故郷の情景は見えなかった。
昨日まで一緒に寝食を共にした仲間達の姿も、あの情景と同様に何処にも無かった。今、此処には、彼以外の誰もいない。
おそらくは皆、あの“都市”に囚われてしまったのだろう。眠らぬ“都市”の夢に。
彼は決心していた。あの“都市”を破壊するのだ、と。
彼の乗ってきた宇宙探査船には、宇宙デブリ破壊用の誘導爆弾が備え付けられていた。それで、破壊出来る筈だ。
暫く動かしていなかったが、宇宙探査船は正常に稼働する。
誰もいない。誰もいなくなってしまった。孤独の星にただ独り。まるで夢の後のようだ。いや、まだ夢の中か。
上空からあの“都市”の姿が見える。まさに、遺跡のような物体だ。囚われてしまったかつての支配者よ、そして我が同胞よ。今こそ目覚めよ。
彼の宇宙探査船から二発の誘導爆弾が“都市”へと吸い込まれていく――
「眠れ、都市よ。お前はもう、その役目を全うしたのだ」
茜色に燃え上がる都市の姿が、彼の目に焼き付いていた。
「お休み――」
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