序章 -勿忘草-

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「前に図鑑で見たことがある。間違いない。勿忘草だ」 「へえー。オレは本とか読まねえから、花の名前なんて全然知らなかった」 「僕だってそんなに読んでるわけじゃないよ。ただ、この花はね……」  勿忘草。  この花の名前に惹かれたから。それだけ何故か印象に残ってたんだ。 「……忘れねえよ。いつまでも」  独り言のように少年がつぶやいた。  それは僕に向けられた言葉ではなかったはずなのに、なんだかとっても胸が温かくなった。 「おーい、(すすむ)! こんな所にいたのか。行くぞ!」  その時、突然後ろから僕を呼ぶ声がした。  父さんだ。  慌てて手の泥を払い、僕は立ち上がる。  空を見上げると、すっかり日も落ち、辺りは暗くなってきていた。いつの間にこんなに時間が経ってたんだろう。
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