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でも父さんは、ひたすら絵を描き続けている。
ひとりで。
だから僕は、そんな状態なのに、よく母さんと結婚できたものだと不思議に思ってた。というか、母さんはこの人のどこが良くて結婚したんだろう。
なんて。
幼心にそんなことを考えていたこともあったんだけど、でも、結局僕のその疑問は永遠に解けない謎になってしまった。
何故なら、母さんが亡くなってしまったから。
母さんが生きていた頃、父さんは一人で絵を描きに出かけていたので、僕は母さんと二人で父さんの帰りを待つ、という生活をしていた。
ちょっと違うけど、単身赴任みたいな感じ。
でも数年前、病気で母さんが亡くなってから、父さんは絵を描くための旅に僕も同行させるようになった。
何故って、僕はまだ小学生だったし、ひとりで留守番するのは難しかったんだ。
それに、だからって実の親がいるのに、父さんが出かけるたびに施設や親戚に預けられるっていうのは、なんだか違う気がしたからだ。
父子二人での旅暮らし。
最初の頃、いつも家にいなかった父さんと、これからはずっと一緒にいられるんだと思ったら、ワクワクしたし、ちょっと嬉しくもあった。
でも現実はそんなに甘くない。楽しかったのは最初だけ。父子二人だけの旅には、随分と苦労させられた。
っていうか、させられている。現在進行形だ。
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