第一話 -雪割草-

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「…………」  いつものことなんだから。  それなのになんで、こんな妙な気持ちになるんだろう。  僕は自分の胸に手を当てて、ギュッと目をつぶった。  何故なら、そうしないと涙がこぼれ落ちそうだったから。  雪が止んで春が来たら。  そう聞いた時、僕は泣きそうだったんだ。  どうしてかわからないけど、今にも泣きそうに哀しかったんだ。  めちゃくちゃにキャンバスを切り裂いてやりたいほど。  北海道の地に来て知ったこと。  それは、雪は見ている分には綺麗だけど、実際その中で生活するのは大変だということだった。  たとえば学校のグラウンドを使用してする競技。  サッカー部や野球部なんかが多いんだけど、彼らは冬の最中、雪が多い日はグラウンドが使えないから、よく体育館の片隅を借りて基礎訓練やボール磨きを行っていた。  しかも、ようやく雪が止んで外にでられるようになっても、まずしなければならないのは雪かき。ちゃんとした練習が出来るのはそれからだ。
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