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「あーあ。さっさと雪止まねえかな」
今日もまた、降り続く雪を睨み付けながら、和志がそうぼやくと、その隣で晴紀が同意するように頷くのが見えた。
「止んでほしいのは山々だけどね」
でも晴紀は、その後、困ったように首を振る。
「今日いっぱいは降り続くって、さっき天気予報で言ってたよ」
「ホントかよ、晴紀」
「ああ、ホント、ホント。それにこの感じじゃ、明日は止んでも雪かきだけで一日終わりそうだね」
「それじゃあ練習出来ねえじゃねえかー」
晴紀の言葉に悔しそうに舌打ちをして、和志はそばにあったサッカーボールを手でポンッと転がした。
彼等は、この学校の、ぎりぎり十一人しかいないサッカー部員のメンバーだ。
今、僕の隣でぶつぶつ文句を言いながらストレッチをしているのは、サッカー部の副キャプテン、小田切和志。
なんだかんだ言いながら、暖房の入った体育館の一番暖かい場所を陣取っている。
「おら、ちゃんとストレッチやれよ、お前ら。こういう地道な努力が、後で良いプレイに繋がっていくんだからな」
少し離れた場所で必死に腹筋をしながら檄を飛ばしているのは、松ケ瀬光基。彼はこのサッカー部のキャプテンだ。
思いこんだら一直線の単純明快な性格と、何事にも物怖じしない度胸の良さ。少し喧嘩っ早いけど、みんなが認める立派なキャプテンだと思う。
そしてその光基の補佐(フォローとも言う)を一手に引き受けているのが、先ほどラジオで天気予報を聞いていた金谷晴紀。
優しげな顔立ちと、柔らかな言葉遣いでみんなの気持ちを和らげてくれる。でも、奥にとても強いものを秘めているのが、その言動の節々からうかがえる。
そうそう、和志はこの晴紀と同じ病院の同じベッドで生まれたんだそうだ。もちろん生まれ月は二ヶ月程ずれてるけどね。
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