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だって、なんといっても僕は転校を繰り返す生活なんだ。正式に何処かのクラブやチームに所属したくても、数ヶ月で辞めなくちゃならない。たまに助っ人として参加することはできても、僕はいつもお客様。
誰も僕を仲間だなんて認めてくれない。
だったら僕のほうも、最初から仲間になろうとなんかしなきゃいいんだ。
人は期待するから、期待が外れた時、泣く羽目になる。だから期待なんかしなきゃいい。期待なんかするだけ無駄だ。
そう思ってたのに。
あの時、金網に手をかけ、じっとグラウンドを見つめていた僕の姿に最初に気付いたのは光基だった。
小雪のちらつく中、僕はきっと物欲しそうな目をしていたんだろう。いきなり、フェンスを乗り越え僕の所に走ってきた光基は、強引に僕をグラウンドの中に引っ張り込んだ。
「紅白戦兼ねたミニゲームやってるんだけどさ、メンバーが一人足んねえんだ。ちょっと手伝ってくれねえか? 晋」
「……僕で…いいの?」
「お前がいいんだよ」
「わ…わかった」
その時、素直に頷いたのは、光基が真っ直ぐに僕を見て晋と、名前を呼んでくれたからだった。
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