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「あー、思いっきりボール蹴りたいよう。何とかしろよキャプテン」
ひたすらボール磨きをしていた晴紀が、ついに音をあげて光基を見た。
「そうだ、そうだ、何とかしろよ、キャプテン。もう、ボール全部磨き終わったぜ」
「お前ら、そういう時だけ人をキャプテン扱いすんなよな」
腹筋の途中で首だけ振り返りながら、光基が言い返す。
「だって、一週間まともにグラウンドで練習できてないんだよ。腐りもするよ」
ここ数日間、雪はずっと降ったり止んだりの繰り返しだった。
ようやく晴れ間が見えて、雪かきをして、グラウンド整備が終わった頃、再び雪がパラつきだす。まるでイタチの追いかけっこだ。
「なにが可笑しい。晋」
むすっとした顔で、和志が僕の顔を覗き込んできた。
「晋、お前は初めてだから珍しいってだけで終わってるかもしんないけどさ、ホント毎年毎年これじゃ、さすがに嫌んなるんだぜ」
「そうそう、今年こそは大いなる野望を成就させる絶好のチャンス到来だってのに」
「野望?」
僕が磨き終わったボールを放り投げた晴紀に聞くと、待ってましたとばかりに、横から和志が身を乗り出してきた。
「ほら、オレ達、今度六年生になるだろ。ずっと言ってたんだ。六年生になったら本州へ殴り込みかけるぞって」
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