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楽しそうに頷きあうみんなを見て、ふと僕の心が重くなった。
“雪が止んで春が来たら、この寒い地方ともさよならだぞ、晋”
この間、父さんはそう言った。
ということはつまり、彼らが全国大会に行く頃、僕は此処にはいないんだ。
冬が終わって春がきたら、僕は此処からいなくなる。
春が終わって夏がきた頃、僕は何処にいるんだろう。
「だから、少しでも多く練習したいんだよ」
「あーあ。早く春が来ねえかなあ」
「せめて雪が止んでくれたらなあ」
悔しそうにつぶやきながら、みんなが窓の外を見上げた。雪はいっこうにやむ気配もなく降り続いている。
「あ、そう言えば……なあなあ、光基。そろそろじゃねえか? 雪割草」
くるりとみんなのほうを振り返って、突然、和志がそう言った。
「そっか。もうそんな時期か」
「今週末なんかどうかな?」
「それはいくら何でも早いだろ。せめて来週か再来週になんねえと」
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