第一話 -雪割草-

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 楽しそうに頷きあうみんなを見て、ふと僕の心が重くなった。 “雪が止んで春が来たら、この寒い地方ともさよならだぞ、晋”  この間、父さんはそう言った。  ということはつまり、彼らが全国大会に行く頃、僕は此処にはいないんだ。  冬が終わって春がきたら、僕は此処からいなくなる。  春が終わって夏がきた頃、僕は何処にいるんだろう。 「だから、少しでも多く練習したいんだよ」 「あーあ。早く春が来ねえかなあ」 「せめて雪が止んでくれたらなあ」  悔しそうにつぶやきながら、みんなが窓の外を見上げた。雪はいっこうにやむ気配もなく降り続いている。 「あ、そう言えば……なあなあ、光基。そろそろじゃねえか? 雪割草」  くるりとみんなのほうを振り返って、突然、和志がそう言った。 「そっか。もうそんな時期か」 「今週末なんかどうかな?」 「それはいくら何でも早いだろ。せめて来週か再来週になんねえと」
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