第一話 -雪割草-

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「た……楽しそうだね」 「そういえば、晋ってなんか雪割草みたいだ」  突然僕の顔を覗き込んで、晴紀がそんなことを言いだした。  とっさに表情を読まれないかと、僕はあわてて晴紀から顔をそむける。 「何……それ?」 「ほら、小さくって白くって、可愛いって……あれ? これじゃあ女の子の形容詞だ」 「何言ってんだよ、晴紀」  周りからすかさず、お前のほうが女顔だろとの突っ込みがはいる。  春を呼ぶ雪割草。  僕は、ばれないように小さくため息をついた。  窓の外は静かに降り続く細雪。  雪を見上げるみんなの側で、僕は別のことを考えていた。  永遠に雪が止まなきゃいい。雪割草なんか咲かなきゃいい。  そしたら、春はこない。  春はこないのに……。
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