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「た……楽しそうだね」
「そういえば、晋ってなんか雪割草みたいだ」
突然僕の顔を覗き込んで、晴紀がそんなことを言いだした。
とっさに表情を読まれないかと、僕はあわてて晴紀から顔をそむける。
「何……それ?」
「ほら、小さくって白くって、可愛いって……あれ? これじゃあ女の子の形容詞だ」
「何言ってんだよ、晴紀」
周りからすかさず、お前のほうが女顔だろとの突っ込みがはいる。
春を呼ぶ雪割草。
僕は、ばれないように小さくため息をついた。
窓の外は静かに降り続く細雪。
雪を見上げるみんなの側で、僕は別のことを考えていた。
永遠に雪が止まなきゃいい。雪割草なんか咲かなきゃいい。
そしたら、春はこない。
春はこないのに……。
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