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少年は、枯れ草が半分位を覆っている斜面の真ん中辺りで膝を抱えて、じっと何かを見ているようだった。
「何をしてるんだろう?」
気付かれないように回り込み、ちょうどその少年の横顔が見える位置まできて僕はハッとした。
少年が見ていた何か。それは泥に汚れた一匹の猫だった。
僕と同い年か一つ上か、それくらいに見えるその少年は、猫をあやすでも撫でるでもなく、ただギュッと唇を噛みしめて睨みつけるように猫を見下ろしている。
何となく興味をひかれ、少年と猫の方へと一歩足を踏み出した僕は、次の瞬間、不覚にも小さな声を上げてしまった。
「……!」
しまったと思った時はもうすでに手遅れで、少年はぱっと顔をあげ、きつい眼差しで僕の方へ顔を向けた。
「なんだ。お前?」
「あ…あの……その猫……」
よく見ると猫の腹の辺りが赤黒く変色している。
「怪我……してるの?」
「さわるな!」
鋭い声で制止をかけ、少年がさっと猫を抱き上げた。とたんにだらんと伸びた猫の身体から赤黒い血が滴り落ちてくる。
僕は思わず声を詰まらせた。
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