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「さあ!いよいよ残るは2組!サモアのトロイ・レオタとカイリー・ソロモア、そして、ニッポンの杉本ゲンキと綿矢ミサト!優勝争いはこの2組のペアの手に委ねられました!」
実況席では興奮した成瀬が、立ち上がらんばかりの勢いで絶叫していた。
「それにしてもスペイン、中国共にまさかの56分台。オリンピックには魔物が住むといいますが、本当に勝負の行方は分かりません!矢神さん、どうですか?」
「どうって?見たまんまやないか」
矢神の反応に慣れた成瀬は気にすることなく続けた。
「さて、いよいよサモアと日本の一騎打ち!勝てば金メダル、負けても銀メダルです!両者のタイムは既に58分を経過しています!矢神さん、日本サイドは、あと何に注意すればいいんでしょうか?」
「何もあれへん。あとは“起きる”だけやがな」
「はい、そうですね!では、ワタクシは杉本・綿矢ペアが少しでも長く眠れるようにお祈りしたいと思います!おーっと!」
次の瞬間、満杯の客席からどよめきが起こった。サモアのトロイと日本の綿矢が同時に目覚めたように見えたのだ。
「こ、これは難しい!こちらからは両者がほぼ同じタイミングで目覚めたように見えましたが、さて、判定はどうだ!」
絶叫する成瀬の横で、矢神がそっと手を合わせる。
「出ました!判定は“サモア 58分41秒、日本 58分42秒”でニッポンの勝ちです!杉本・綿矢ペア、優勝です!!!」
会場からどっと歓声が沸く。思わず立ち上がって抱き合う成瀬と矢神。
「今、目覚めた杉本選手が綿矢選手の所へ駆け寄って行きましたが・・・」
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