睡眠ペア

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ゲンキはミサトの前に跪くと右手を差し出した。そしてミサトに向かって大声で叫んだ。 「ミサトさん、これからは毎晩一緒に眠ってください!ボクと結婚してください!」 騒がしかった会場が一気に静まりかえる。世界中の注目が二人に集まる。 「ゲン君・・・」 ミサトはゲンキの目をじっと見つめた。だが、その顔は当惑しているように見えた。 しばらくの沈黙の後でミサトが言った。 「ごめんね。私、ゲン君の気持ちに応えてあげれない。好きな人がいるの・・・」 ゲンキの頭が真っ白になる。心配していた最悪の結果だった。 「ゲンキ!ミサトを困らせるなよ!」 背後から響く野太い声に、ゲンキが振り返る。声の主はサモアのトロイ・レオタだった。 「試合には負けたかもしれんが、人生まで負けた訳じゃないぜ!」 恰幅の良い身体を揺らしながら、トロイがミサトの側へと歩いていく。 「ごめんなさい・・・、今まで黙ってて・・・」 トロイに寄り添ったミサトが、悲しげな顔で言う。 まさか、まさか、マジですか・・・。冗談でしょ?こんなことって本当にあるの?まるで夢でも見ているみたいだ・・・。 ゲンキは顔を上げてもう一度、トロイの顔を見つめた。 「なんだよ、寝ぼすけ!早く目を覚まして現実を受け止めな!」 ゲンキを睨み付けながら、トロイが言う。 「オレは眠ってなんかいない!それにミサトはオレのオンナだ!」 ゲンキはトロイに飛びかかると、顔面を力一杯殴りつけた。会場から悲鳴が上がる。 「やめて!何するの!ゲン君!」 ミサトも必死に止めにかかる。 「目覚めろ!夢から目覚めるんだ!」 ゲンキは叫びながらトロイの右腕を掴むと、力の限りに引っ張った。引っ張られた右腕が飴のようにびろんと伸びる。
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