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頭の中が鮮やかな星空で満たされると、眩い星の輝きが徐々に身体中へと広がっていった。全身の感覚が少しずつ遠のいていくのが分かる。まるで二人の身体が溶け合ってひとつになったような心地よさだ。ミサトとの同調が最高潮に達している証だった。
よし、いつもより深く強く同調してるぞ・・・。
出足こそ遅れたものの、今日の二人の同調は抜群だった。ゲンキは優勝への手応えを感じた。
120分の競技時間の中でノンレム睡眠に滞在出来る時間はおおよそ58~59分。60分を超えると新記録だが、いたずらにタイムを狙うと生理反応に捕まって覚醒へと連れ戻される危険性も上がる。無理は禁物だ。
ずっとこうしていたいかも・・・。
いつにない完全な同調の中でゲンキはふと思った。プロポーズの不安を思うと、ミサトとひとつになれる夢の中にいる方が幸せかもしれない。
だが、それも束の間のことだった。身体からの急激な警告を感じたゲンキはノンレム滞在のリミットが近づいていることを悟った。迫り来る生理反応の不快感に耐えながらギリギリまで粘るが、ミサトとの同調が鈍くなった所でゲンキは判断した。
ここまで・・・だ。
滞在にはしっかりとした手応えがあった。100%とは言えないが、全力は尽くした。優勝争いに加われる位の成績は出てるだろう。
ゲンキは目を開いた。同じタイミングでミサトも目を開く。
「ミサトさん、やるだけはやったよ!覚醒へ戻ろう!」
「うん、私達、優勝できるよね!」
ミサトが笑顔で応える。
「じゃあ、あとはお目覚めで!」
二人はいつものように挨拶を交わすと、握り合っていた両手を離した。ここから覚醒までは、また別々の旅だ。
ゲンキは立ち上がり、部屋を見上げた。そこに天井はなく、長いトンネルがどこまでも上へと続いていた。
ゲンキは床を蹴ると、トンネルの中へ吸い込まれるように飛び込んでいった。
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