再会

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コーヒーを飲み終わり、俺は店を出た。 彼女も店から出て来た。 「私がいるから来たの?」 「知らなかったよ」 「本当に?」 「ああ・・・」 「結婚、まだしてないんだね」 「ああ・・・」 俺はコーヒーを淹れる彼女の手を見て、結婚指輪がはめられていないことを確認していた。 どうやら彼女も確認していたらしい。 「いい店だな」 「ありがとう」 「・・・実は俺、仕事をサボって来たんだ」 「そう・・・」 彼女は俺を蔑むことなく、短く受け入れた。 「ねぇ、番号教えて」 「ああ・・・」 俺たちは携帯電話の番号を交換した。 俺の携帯に久しぶりに彼女の電話番号が戻った。 と同時に、もう二度と削除することはないだろうと思った。 「私ね、いつか、こんな店を持ちたいと思ってるんだ」 「ここ、お前の店じゃないのか?」 「そうよ。私も仕事をサボってここへ来て、バイトの貼り紙を見つけて、即、面接してもらったの」 彼女のエピソードを聞いて俺は吹き出した。 「やっぱり同類だな俺たち。・・・俺も、いつかこんな店を持ちたい。一緒に店、やらないか?」 「やる・・・」 短く返事をした彼女の手が、俺の手に絡みついた。 その時、俺は仕事をサボった罪悪感と、会社へ行きたくない情けない自分が、彼女と再会するための必然だと思えた。 傍から見れば甘えた言い訳かもしれないが、彼女の手の温もりに運命の歯車が動き出したと感じたから・・・。 (終わり)
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