10人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、ダルド様・・・・」
アニルの村を出ると、不意にアジャンがダルドに話しかけた。
「グルケのことなんですが、やはり森の乱れの所以なのでしょうか?」
アジャンの声は少し震えていた。
「わしにも分からん。だから、森の精霊士に問うてみるのだ。だが、グルケのことといい、ドートのこととい、乱れが起こるのには必ず理由がある」
「もし、もしですよ。グルケが乱れの所以だったとして・・・、ですよ」
アジャンは息を吸うと、意を決して言った。
「その時は、私がグルケの代わりになります」
アジャンの言葉にダルドは驚いた。ダルドの顔に驚きを読み取ったアジャンは言い訳をするかのように付け加えた。
「それで森と村の調和が戻るのであれば・・・、是非、そうさせてください。あと、グルケには村でいつも良くしてもらっていたし・・・、心の優しい子なんです。それが、こんなことになるなんて・・・」
アジャンの目には、いつしか涙が溢れ出ていた。
「アジャン、お前は本当に気持ちの優しい子だ。その優しさは大切にするがいい」
ダルドはアジャンに諭すように言った。
「だが、乱れをの所以を調べてどう調和させるかを決めるのは、賢術士であり、精霊士たちだ。もし、グルケが所以であったのならば、賢術士であるわしがこの身を差し出すべきだろう」
「ダルド様・・・」
アジャンは、涙をためた真っ直ぐな目でダルドを見つめた。
その真摯な視線に、ダルドの胸が痛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!