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幸せな「風」
自分らしさを問われたら人はどう答えるだろうか。
ある人は、そんなものはないと答えるかもしれない。
また、ある人は好きなスポーツを答えるかもしれない。
体型や顔のことを答える人もいるかもしれない。
他者との関わりを答えるかもしれない。
それはきっと唯一無二ではないのだろうと思う。それでも、自分を形作るいくつかの要素を考えて言うのだろう。
かく言う私は絵を、作品を自分らしさとする。美術絵画に憧れ、自分がその領域に達することが出来ればと羨望する。そのためには、障害になるものは全て捨てることを覚悟している。生きる上で大切なものは一つあれば十分だ。そう思う。そう思ってた。
そんなこと言いながら、本当は何処かで分かってたのかもしれない。
回想を始めようと思う。語り手になるだなんて、それこそ数年前からしたら思いもしなかっただろう。
加えて、これは独白だ。贖罪を求める声だ。
すべてはあのときの「さよなら」に対しての。
夏の蝉の声と雑踏が思考と現実の差を掻き乱した。
私には才能が無い。だから、何かを成し遂げようとするには人以上の努力が必要だ。
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