幸せな「風」

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 よく、努力も才能の一つだなんて言うけど、あれは綺麗事、余計な希望だ。才能というものは絶対的なものだと思う。絶対的で暴力的だ。  軽々しく誰もが持てるような言葉にしてはならない。無才能者が才能者の価値を下げてはならない。 「君は強いね」  綾香が羨ましそうに言う。 「そうでもないよ。いつも絶望してる。諦めながらも目指してるんだよ。叶わないと自分に言いながら他にやりたいことが無いから追いかけてるだけ」  苦笑いをした。 「格好良いね、わたしは好きだよ」  綾香が伝える。 「そりぁ、格好つけてるからね」  私はそう笑いながら答えた。  綾香は高校に入ってから、もう二年間になる友達だった。そして、たぶん人生で初めての友達だった。今まで友達がいなかった癖に友達になれたのは、自分でも最大の疑問だと思うのだけれど、言葉で言えないようなそんな波長みたいなものが合ったんだと思う。 「あ、わたしバイトだからそろそろ行くね」  綾香が時計を見て荷物を纏め始めた。 「大丈夫?もう何連勤だか分からないくらいだけど……」  心底心配している「風」に声をかける。 「大丈夫大丈夫!頑張るよ!」  両手を胸前でガッツポーズさせて綾香が言う。ちょこんとしていて少し可愛らしかった。 「そう……。できることがあったら言ってね。できることしかできないから微々たるものだろうけど。」     
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