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この絵が無ければ。そう思った。
ある朝から綾香の笑いが何処か嘘っぽいと気付いた。何処と無く体調も悪そうだ。
私たちは教室は違うが登校時間を合わせて会話をする。あまり多くは無い時間だが、何となく分かった。だから、私は嘘らしくない「風」な笑いを返した。そうして、私は心底心配している「風」に言う。
「大丈夫?体調悪い?」
「あー、うん。大丈夫……」
少し気だるげのように感じた。
「そう?何かあったら何でも言ってね?」
「うん……」
加えて、何処か煮え切らない返事だった。
「あのね……」
綾香が躊躇いがちに言葉を発する。
「先生にね。絵を描き続けてみないか言われて。でも、放課後はバイトだしって言ったらせめて朝に少しだけって話になって。とりあえず、少しの期間だけやろうと思うの……。だから……。」
「一緒に登校できなくなるってことね?分かった。頑張って。応援してる」
笑顔な「風」な表情を作った。
「うん。ありがとう。じゃあね」
そう綾香が言う。
「うん。また」
そう交わして二人の会話は終わり、それぞれの教室に別れて入って行った。
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