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160cm後半程だろうか。女子の身長で平均値だった私とほとんど同じではあったのに今となってはもう少し見上げなくてはなくなってる。
「ああ……。何…してるの……?」
ぼそぼそとした声で、おどおどと聞いてくる。
「考え事。高瀬は元気だった?」
「うん……。お陰様で……」
いったい、何がお陰様なのか分からない。
「元気そうで何より何より」
「……うん」
それきりで高瀬が黙るから私は川に向き直る。
水面がゆらゆらと揺れ、しばらく眺める。
「……なんで」
高瀬が口を開いた。私は振り返らず川を望む。
「……いつも笑ってるの……?」
唐突な質問で意味も分からなかった。
「僕とも、誰とも話しても……」
とりあえず、私はこう答える他なかった。
「笑っていれば幸せになれるかなって思っているんじゃないかな」
他意は無い。
「……そっか」
高瀬は答えなんてとうに知っているようだった。
あの日と同じような風景だった。
でも、隣にいるのは高瀬じゃない。綾香だ。
図書館にいた時に、この橋に呼び出されたのだ。
「ねぇ」
強めの言葉が綾香から放たれる。私は風景を見続ける。
川の水面を、飛沫を上げて魚が跳ねた。水中と空中の境界の水面を越える。
「なんで、いつも笑ってるの?」
どうして、高瀬と同じ質問をするのか。分からない。だから、私は黙る。
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