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「なんで、大丈夫を繰り返すの?」
友達が苦しいときに大丈夫と声をかけるのは罪じゃないだろう。
「私……私、分かったんだよね」
いったい何をなのか。私には分からない。
「結局、君は私を見下してるんでしょ!?そういう風に言って自分がましな人間だって思いたいんだ!自分が、ましな家庭にいることに優越感を得てるんだ!」
綾香が急に叫んだ。前のめりになって私を睨み付けている。
私は黙る。黙り続けた。
「なんで、黙るの?本当なの?ねぇ、答えてよ!?」
そう言い捨て彼女は小走りで消えた。暫く聞こえた足音も次第に小さくなっていく。
「さよなら」
風の音が私の冷たい声をかき消して、口から音が出たのかも分からなかった。
川の流れは何も変わっていない。
違うと、そう思った。
私は綾香を見下してなんていない。高瀬も見下してなんていない。
私はたぶん……羨ましいんだ。良いとは言えない家庭、病弱な体質、生まれもって変わらない運命、悲劇。対し、私は恵まれている。何不自由ない生活をできる家庭、普通の健康体。
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