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「そうだ、交番!」
交番は、無くなるはずがない。
探し物は、交番へ。
そこへ行けば、失われた25年のヒントが見つかり、母の所在も分かるだろう。
マリカは再び重い体を起こし、歩き始めた。
当然だが、町の様子は変わっていた。
畦道だった通学路は舗装され、畑と空き地だった土地には、築後間もないような新しい家が建ち並んでいる。
マリカの記憶にある地図と、目前の風景はまるで一致しなかった。
「今度、ママがスマホ買ってくれるって」
「え、いいなぁ!」
足を引きずるように歩くマリカの脇を、ランドセルを背負った二人組の小学生が、かしましく通り抜けようとしていた。
「ねぇ、ちょっと教えて。交番は、どこかしら?」
一人の少女の腕を掴み、尋ねる。
「知らない人だ、行こう!」
非情にも、少女たちはマリカの問いかけを無視し、駆け出した。
「何よ、不親切ね……あっ!」
ドンッ、という鈍い音と共に衝撃が走る。
背後から、何者かがマリカを突き飛ばしたのだ。
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