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振り返ると、長髪にジャージ姿の男が仁王立ちで唾を吐いていた。
「邪魔。 道塞いでんじゃねえよ、おばさん!」
ガックリと膝をつくマリカに、男は捨てセリフを浴びせる。遠巻きに何人かの野次馬が見ていたが、マリカに手を差し伸べる者は、誰一人としていなかった。
「何なのよ、2019年……」
━━25年前より、人間が冷たくない?
それとも、私が50歳のおばさんだから!?
恐怖と怒りに震えながらも、無礼者の男のお陰で思い出せた出来事があった。
階段の踊り場で倒れていた理由だ。
「私……誰かに、突き落とされた」
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