遼太郎の場合

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汗と汗臭さと制汗スプレーと色々な臭いがないまぜになって、その臭いが部室中に充満していた。 グラウンドから部室に戻り、各々水分補給をしたり、着替えをしていたり、タオルでがしがしと顔を拭いていたりと、部活が終わり、下校準備を始めていた。部活が終わったばかりだった。 遼太郎はふぅー、と一息つき、部室のベンチに腰を下ろした。 気を張っていたせいなのか、部活後の安堵感からなのか、身体の疲れがどっと押し寄せてきた。それと同時に自分の身体がひどく水分を欲してることに今、気がついた。ーー喉がひどく渇いている。 「 ほいっ 」 頭上から聞き慣れた声がした。ほいっ、という声と共に顔を上げると、幼馴染兼友人兼クラスメイトの真崎がペットボトルのキャップ部分を掴んで、清涼飲料水を目の前にぶら下げてきた。 「 うわ、お前またかよ 」 「 なに?りょーちゃんだって喉渇いたって思ってたでしょ? 」 「 だからってお前いつも... 」 友人の真崎の小さい頃からのいつもの癖。 真崎は自分がペットボトルの三分の二の清涼飲料水を飲み、三分の一を必ずいつも残して自分にきっちり差し出してくる。 「 だってまずいじゃん 」 こいつ、と最初は思っていたが、今は役得。 受け取った清涼飲料水を飲み干して、空になったペットボトルを真崎のお腹に押し返した。 「 うっせ、一番美味いわ 」
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