母が死んだ。

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 彼女たちは、みな僕の母親くらい年齢に見えた。忙しない口調で、ひっきりなしに話し続け、僕には聞き取れない言葉に笑い合う彼女たちは、梢で騒ぐ鳥の群れのようだった。僕に気付くと、女たちはそのお喋りをぴたりと止めた。僕は会釈をした。けれども、みんな目を丸くして僕を見つめているだけで、誰も返してくれなかった。僕が行き過ぎると、誰かが蓋を開けたみたいに、お喋りがまた始まった。  中央の校舎に正面から入って、僕は案内を乞うた。校舎の中は薄暗かった。水気を帯びたような空気は、冷たく淀んでいて、外の暑気のあとでは、寒気さえ感じられた。  直ぐに、奥の暗がりから痩せぎすの少女が現れ、目が悪いのか、僕を睨むようにした。彼女は顔色が悪く、髪を三つ編みにして、長く垂らしていた。僕が来意を告げると、彼女はうなずき、受け取った手紙の話を始めると、「それはわたしが書いたのです」と遮るように言った。  それから、彼女は僕を案内しようと言った。母親はここの裏山に眠っているのだという。  けれど、まず院長に会って欲しいと、彼女は付け加えた。それは僕にはどうでもよいことだったけれど、断れば却って手間が掛かると考えて、同意した。すると、彼女は古びたスリッパを出し、僕の先に立った。木の床は一歩進む毎に軋んだ。廊下の片手は大きな窓に面しているのに、奇妙に薄暗かった。     
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