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最後の授業がどこか感傷的なのは何故だろう。 習うべき内容もすべて終わり、ほとんど三年間の振り返りに充てられるからだろうか。別に好きでも嫌いでもなかった教師にさえ、これではぼ会うことはないのだという一抹の寂しさを覚える。 隣に座る校内一の秀才も、後ろの席のにぎやかなバドミントン部部長も。部活で顔を合わせた同級生達も。 私は卒業後、隣町の高校に進学する。だから市内で会う可能性はゼロではないのだけれど、これからは自分から働きかけない限り、親しく付き合うことはないだろう。 最も仲の良い友人というのはできなかったとはいえ、私はそれなりに穏やかに三年間を過ごした。顔を合わせればくだらない話もしたし、一つの目標に向かって周りと協力したりもした。 別れらしい別れというのは始めてだった。幼稚園の卒園はあまり記憶がないし、小学校はほぼそのまま持ち上がりだった。たまたま住んでいた地域の学校に入り、たまたま同級生となった生徒達と日々を過ごした。 書き記してみればただそれだけのことだ。そう思う反面、どこか落ち着かなくて、意味もなくセーラー服のスカーフを結び直す。 高校の制服はネクタイタイプのブレザー。来月の今頃は今とは全く異なる姿で、全く異なる環境に身を置いている。 私にはそれが不思議で仕方なかった。
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