0人が本棚に入れています
本棚に追加
第2章 人外の村『幻燈村』
私は雫。人外の鬼。ここ、人外が住む『幻燈村』に住んでいる。
「あぁ、起きてたんだ。おはよう。最近、起きるのが早いよね。何かいいことでもあった?」
私を起こしに来た彼、稲成は私の世話係で人外の狐である。
「別に。特にないけど?あったとしても稲成には関係無いでしょ。」
そう、稲成にバレてはいけない。私が人の子と会っていることを…
「そう?夜遅くに出かけてるから何かあると思って夜道は暗いから気をつけてねって思っただけなんだけどな…」
そう言いながら苦笑いする。
そんな彼を横目に見ながら私は運んできてくれた食事を食べる。
「今日も出かけるから、そのつもりで。」
「了解しましたよ。気をつけてね?」
素っ気ない会話でもこれがいつも通り。
「ご馳走様」
「行ってらっしゃい。」
そう言って私は家を出る。
私の家は人の村と幻燈村の境目付近にある。つまり人のいるところにも近い。
(はやく…はやく彼に会いたい…)
はやる気持ちを抑えながら村を出る。村から出ると先程まで明るかった空は急に暗く夜の色になった。
幻燈村は時間が真逆である。村が朝なら人のところは夜である。
村を出て、いつもの場所に早足で行く。彼を思い出して自然と笑顔になる。
(はやく…はやく彼に…!)
最初のコメントを投稿しよう!