1人が本棚に入れています
本棚に追加
その中の一人である女の子とネットではない現実の場で会って、会話して一緒に遊んで、楽しく過ごしたと言うのは、夢のような出来事だった。
彼女は確かにそこにいたし、彼女は自分の事を友達として好きでいてくれたはずだった。
でも彼女はそこにいない。彼女の名前をFacebook以外でネット検索しても同一人物だと確定できる人はどこにもいない。
彼女は自分の事を思ってくれる事があったのだろうか? 彼女は今でも自分の事を思ってくれるのだろうか? やはり自分だけの一方通行なのだろうか?
よく分からなくなった。
彼はそこまで思い詰めて考えたら、自分がせっかくカフェにいるのにその楽しさを味わえないと思って、中の装飾を見たり純粋に外の景色を眺めたりする事にした。
店員は忙しく働き、しかし反対に他のお客さんはゆっくりと過ごしている。
外は店内とは打って変わって雑多で明るく、買い物袋をぶら下げた親子や家族、カップルなどがいる。
カフェ内にある雑誌を手に取り、読んでみる。GOODS PRESSの電化製品の特集コーナーは、思わずその商品を自分が使っているのを想像する。
ふと手元にあるCDを見た。中身を見たいと思ったため雑誌を棚に戻した。
CDの中を開けて見る。
すると彼の頭の中である歌が流れた。
それは彼女とカフェで話している時、かかっていた音楽だった。
彼はこの曲が気に入りすぐさまスマホでその曲を検索した。
「ごめん。こう言う曲が好きでそれで」と言うと、彼女は「大丈夫」と笑ってくれた。
それから彼女は別の曲が流れると「この曲も好きなんでしょ? 気になったらどんどんshazamして」と言ってくれた。
だから彼は気になる曲があったらshazamした。そして気になる曲がどんどん出てくるから自動検索設定にすると言ったら、彼女は声を出して笑ってくれた。
彼が気に入った音楽の一部はThis the KitのBullet ProofとTuvabandのUnknown。
それからその曲をダウンロードして、以来時折聞いていた。
昨日も聞いていたし、Bullet Proofは何気ない曲調だけどジワジワ自分の心に浸透する曲だから、彼女の事で思い悩んでいるのは音楽のせいとしながら、曲が好きでまたはまって聞いていた。
そして今日、たまたまTuvabandのCDが見つかったから購入した。
そう言えばUnknownの意味は知られていない。彼女の消失の理由と同じだなと苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!