3 鈴蘭

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3 鈴蘭

好き。 その思いが君に届くことはない。 片思いという気持ちを瓶に閉じ込め心の奥底の秘密の部屋に鍵をかける。 君に出会ったのは高校生のときだった。 僕は園芸部で花壇の花を手入れしていた。 そんなことも気にせずに花を踏み潰す同級生たちがいた。 彼らに注意してくれたのが君だった。 君は学年のアイドル的存在で地味な僕とは住む世界が違うのによく話しかけてくれたね。 告白する勇気なんて少しも出ずに卒業していった。 ご結婚、妊娠おめでとう。 この喜ばしい日に花束を送ろう。 白い小さな鈴蘭の花を。 僕の想い出の花を。 君に多くの幸あれ。
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