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◆◆◆◆
ここはどこだ?
なんで、手足を縛られてるんだ?
……クソッ、わかんねえ。
移動中の車の後部座席に乗せられているのは、辺りの様子と振動でわかる。
運転席と助手席には男が二人。だが、コイツら誰だ?
窓の外に見えるのは、酷く荒れた海。
沿岸を走っているが、随分な悪路だ。ガタガタと車体が上下に激しく揺れ、振動で体が痛い。
ん? ひょっとして、吐き気がするのは、乗り物酔いだけじゃないかも。
全身、熱っぽい。それに頭がぼんやりする。
膜が張ったような不鮮明な意識の中、ふとどこからか声が聞こえた。
〈丁度いい獲物を見つけたな〉
それは、背筋が凍りそうなほどおぞましい声。
男でも女でもない。獣の呻きのような……。
なんて耳障りの悪い声なんだ。
(クソッ、まともに考えられねぇ)
熱でぼうっとしている上に、車の激しい振動が頭ごと脳を揺さぶり、どうにも思考がブレる。
体中くまなく熱が篭って、オーバーヒート気味だ。力がまるで入らない。
一体、どうしてこんな事になっちまったのか。
(あぁ、そうだ。日音と口喧嘩して、頭を冷やそうと出てたんだっけ)
義姉・日音の機嫌を損ねた償いに、彼女の好きな食い物でも買ってやるかと街に出向いたまでは、しっかりと覚えている。
(その途中で、何かにぶつかって、それで……チッ、駄目だ。そこからの記憶がない)
どんなに思考を巡らせても、何に衝突したのかも覚えておらず、その瞬間から車内で目覚めるまでの記憶もまるでなかった。
衝撃時の打ち所が余程悪かったのだろうか。どうも、そのまま意識がブラックアウトしてしまったようだ。
(参った。本当に、なんもわかんねえ)
現状に繋がる記憶もない。
車がどこに向かっているのかも、自分はこれからどうなるのかも不明なまま。
見事にわからないこと尽くしだ。
だが、どういうわけか、不思議と恐怖を感じないのは、この、思考を削ぐような高熱のせいだろうか。
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