禁断の果実

10/12
前へ
/12ページ
次へ
「え? うん……まぁそうだね」 「黙ってればモテるのに」 「仕事に厳しいだけよ」 「厳しすぎですよぉ。鬼の坂口って言われてるんですからね」 「鬼って……うふふ」 ちらっと視線をそちらに向ければ、そのヒトはスマホをいじっていた手を止めて、同じように私をちらりと見ると、本当に小さくスマホの画面を二度叩く。 そして、静かに裏返してスマホを置いて、パソコンに視線を向けた。 そうすれば、お決まりのように私のスマホがフルフルと震える。 それを手にして、画面をタップすれば、そこには……ってちょっと! すぐにスマホをひっくり返して、デスクに置いた。 もうっ! もうっ! もうっ! 再びちらっと盗み見れば、パソコンの影で肩を揺らしている彼の姿。 スマホの画面に映し出された言葉たちは、私の頬を熱くする。 こんなことを言う人だなんてみんなが知ったら、きっと腰を抜かすと思う。 【――俺のお姫様。攫ってもいいよね? 】
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加