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フロアの女の子たちがきゃあきゃあと黄色い声をあげていることなんてお構いなしで、私と目が合った彼は、こちらに向けて手を挙げる。
慌てて椅子から立ち上がり彼に駆け寄ると、その爽やかな顔に微笑みを湛えてもうお昼だけど「おはよう」と告げた。
「な、なっ、なん」
「すみれ、まだ昼休憩大丈夫でしょ?」
「え?」
「いこう」
私の手を引いて歩き出す翔くん。
私たちが付き合っているのは周知の事実だけど、こんな風にフロアから連れ出されると正直後が怖い。
社内人気一、二を争うような翔くんがこんな風に行動すれば、やっぱり女性陣の私に対する風当たりは強くなるわけで……
「翔くん、手が」
「ん?」
「離して」
「やだ」
不安になって訴えてみても、返ってきたのは無邪気な笑顔と拒否の言葉。
「もうっ」
でも、私の唇から零れた声は全然嫌そうじゃなくて、自分でも笑っちゃった。
なんだかんだで繋がれた手を見て嬉しくなるのは、私が翔くんのことを好きだから。
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