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少し肌寒くなってきた風の中、彼の温かさが心地いい。
抱き締められて温もりを感じると、胸がトクントクンって嬉しそうな音を奏でる。
こうやって抱き締められると、よくわかるの。
翔くんが好きって。
でも――
「ごめんな」
翔くんの謝罪のことばを聞きながらゆっくりと目を閉じれば、瞼の裏に浮かぶのは、昨夜の甘い時間の甘い眼差し。
翔くんを好きな気持ちは本当。
でも……今、胸の中にいるあのヒトを……どうしても私は消すことができない。
あの時、あのヒトの胸に飛び込まなければ、知らずにいられたのに。
あの時、翔くんが傍にいてくれたなら、あのヒトを求めずにいられたのに。
ねえ、翔くん。
あの時、あなたが私を選んでくれたなら、あのヒトがあの場にいなければ、私たちは今も純粋にお互いを想い続けられていたのかもしれないね。
一度口にしてしまえば、もっと、もっと欲しくなる。
それが、禁断の果実。
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