sol

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その電話を終えてしばらく。 逸にドレッシングを手渡して微妙な顔をされ、取り留めもなくしかしあまり眠りもせずシャッターを切り、日本に戻り喫煙室の中で携帯の電源を入れた後藤が今度は桜の電話を受け取った。 「もしもしー」 『あ、将生君久しぶりー、なんか凄い声してるねー』 「久しぶりっす、ちょっと遠出してて……」 『そうなんだ』 桜の言う通り後藤の声は凄まじいことになっている。 睡眠不足と煙草とでざらついて、電波でも弱いのかと思ってしまうほどだ。 そんな明らかに疲弊している後藤の都合は気にもせず桜は続ける。 『あのね、敬吾休み取れたんだってー』 「へえ?」 鈍った後藤の頭では、それが何を意味するのかよく分からない。 まあ、桜の話は冴えた頭でも分からないことが多いが。 『結構長いんだよ、一週間だって。なんかすごい忙しかったらしくて』 「へー、いいっすね」 『でね』 先日企画倒れになってしまったサプライズパーティーを、趣旨を変えごく普通の食事会としてやらないかと桜は言う。 それで油断させておいて、逸が帰ってきたら改めて全力のサプライズを敢行するためだ。 「んんー」 なるほどね、とでも言いたげな音程を付けて後藤は唸り、まあいいんじゃないの、と思いつつ、やはり回転の遅い頭なりの速度で話を追っていた。 一週間の休みか……。 窓の外では、行き先は分からないが飛行機がまた飛び立っていく。 敬吾の休み。 サプライズパーティー。 一旦逸抜きでしておいて、後から改めてのサプライズ。 なるほど。よく分からない。頭が回らない。 「うん……」 『将生くん?だいじょぶー?』 視界の端で旋回する飛行機の翼。 まだ頭の中でチカチカしている異国の風景。 敬吾の休み。その伴侶。 ーーあ。 がばりと背中を伸ばした後藤に、外で待っていた柳田が驚いている。 「ーー待って桜ちゃん、良いこと思いついた」 『うん?』 急いで何事か喋りながらまだ長い煙草を消し、後藤が早足に喫煙室を出た。 「じゃあ送っといてくれる?うん、了解」そう言いながら、少しここにいてくれと柳田に手の平を見せ、電話を切り、ぽかんとした顔の柳田を残して、後藤はどこかへ走っていってしまった。
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