sol

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「……こんながっつりしたとこで………」 翌週、金曜。 定時少し過ぎに仕事を終えて指定の店へ行くと、敬吾が案内されたのはそれはそれはロマンチックなガーデンテラスだった。 ランタンとキャンドルで彩られたそこに待っていたのは桜と後藤と柳田。そしてーー 「それ遺影っぽくね?」 逸の写真。 まあツーショットを飾り付けられなかっただけまだいいか、と思っている敬吾に、満面の笑みの桜が抱きつく。 「敬吾!おめでとーー!」 「うっ……」 桜の勢いによろめきつつ、敬吾は「酒くせえ!」とその肩を叩く。 「悪いなー、先に飲んでたー」 「敬吾くんー!改めておめでとうー」 後藤はグラスを上げ、柳田は立ち上がって敬吾に笑顔を向けた。 やはり気恥ずかしくはあるが、改まった挨拶などは求められそうにないこの雰囲気に敬吾はほっとした笑顔と感謝を返す。 「さて、乾杯しよー!」 「飲んでんじゃんかもう」 敬吾の小言は気にもせず、桜はよく冷えたワインが満ち満ちたグラスを敬吾に手渡した。 「じゃあ、かんぱーい!」 桜の声が響くと、続いて乾杯とグラスやジョッキ、祝福と感謝が入り交じる華やかな音が弾ける。 ワインはさらさらと軽くて冷たくて美味かった。 「よっし食べよー、ここご飯おいしいんだよー」 「俺腹減った……」 「俺も……」 「俺も……」 仕事帰りの敬吾はもとより、食事をたらふく食わせるためかセーブされていたらしい男性陣二人は早速料理に手を伸ばしている。 とりあえずサラダを食べていると華やかかつ大盛りな魚料理や揚げ物、ご飯ものが続々届き始めて後藤と柳田は目を剥いていた。けろりとしているのは敬吾のみである。 それらを喜々として取り分けつつ、桜は何やら浮かれているようだった。 「どうするどうする、馴れ初めでも聞いちゃう?」 「ぶふっ」 「おぉ、聞きたい」 「やだよ!」 「えーーー」 絶対に御免こうむる。 そう思いながら少し噴き出してしまったワインを拭いつつ、敬吾は思う。 そもそもわざわざ話すような馴れ初めなどないのだ、たまたまバイト先が同じだっただけなのだから。 「俺も聞きたいなぁー」 どすの効いた地声でふざけた音程を取る後藤をじろりと睨んでやり、敬吾は少し笑う。 「おし分かった、言うからそっちも言えよ?」 「おおぅ……」 「えーいいねえ聞きたい!」 俄然色めき立つ桜を後藤が宥める間、敬吾と柳田は一息ついて笑っていた。
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