呼ぶ家風

7/13

2966人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
「おはよござんすー!シヅんつぁ、車持ってきたんつぉー」 「えー?あらー、まーまーまー!」 玄関先から聞こえた声に、シヅがぱたぱたと走っていく。新年の挨拶の後に「この車でないとF1ばりの走りができないだろう」といった冗談と笑い声が聞こえた。 「もしかしてばあちゃんの車返ってきた?」 「だ風だな。光一んつぁだべ」 そう言って雄三もよっこらしょと出ていき、上がって行けといやもう帰るの応酬のあと二人は戻ってきた。 「車帰ってきたの?」 「んだがらー、正月に仕事させでしまったなぁー」 そう言いつつも、愛車が帰ってきたシヅはにこにこと嬉しげである。 「ドライブでもすっぺが!」 「だー俺ぁやんたぞ誰正月に」 「んでいっつど敬ちゃんさ雪道の馳せ方おせっぺが」 「ん?」 「え?」 ──さすがに新年早々雄三を一人にするのは可哀想なので、以前シヅ講習を受けたことのある逸は雄三と家で金継、敬吾がシヅと行くことになった。 「俺免許持ってきてないけど……」 「なにそごらの道だばおらえの土地だ」 ──だそうである。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2966人が本棚に入れています
本棚に追加