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「おはよござんすー!シヅんつぁ、車持ってきたんつぉー」
「えー?あらー、まーまーまー!」
玄関先から聞こえた声に、シヅがぱたぱたと走っていく。新年の挨拶の後に「この車でないとF1ばりの走りができないだろう」といった冗談と笑い声が聞こえた。
「もしかしてばあちゃんの車返ってきた?」
「だ風だな。光一んつぁだべ」
そう言って雄三もよっこらしょと出ていき、上がって行けといやもう帰るの応酬のあと二人は戻ってきた。
「車帰ってきたの?」
「んだがらー、正月に仕事させでしまったなぁー」
そう言いつつも、愛車が帰ってきたシヅはにこにこと嬉しげである。
「ドライブでもすっぺが!」
「だー俺ぁやんたぞ誰正月に」
「んでいっつど敬ちゃんさ雪道の馳せ方おせっぺが」
「ん?」
「え?」
──さすがに新年早々雄三を一人にするのは可哀想なので、以前シヅ講習を受けたことのある逸は雄三と家で金継、敬吾がシヅと行くことになった。
「俺免許持ってきてないけど……」
「なにそごらの道だばおらえの土地だ」
──だそうである。
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