幸福を願うエラー

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 家から少し離れたところにある、空気精製機を確認する。酸素濃度や二酸化炭素濃度などに問題はないので、機械も問題なく稼働しているのは明白だった。しかし、このドームの中にあるものでは一番精密な機器であるため、点検項目に沿って一つ一つ確認していく。問題ナシ。問題ナシ。問題ナシ……。  続けて、ドーム壁の確認を行う。  円周18.8495……km を歩き、外壁に異常がないことの確認。  傷や穴は一つもない。唯一、外へと繋がっている扉も開けられた形跡はない。問題ナシ。  家に戻る途中に、全面ガラス張りの植物園へ立ち寄る。  外と中から、ガラスの確認。ひびや割れは見られない。問題ナシ。  水と栄養素を供給する装置も問題ナシ。ワタシはボタンを押す。じんわりと土が湿っていき、水と栄養素が全ての植物に行きわたる。植物たちに問題がないことを確認するために、ワタシの家の二百十五倍はある敷地をぐるりと歩いて回る。植物たちは全て正確に成長している。  ただ一つ、ぽっかりと空いた土地をワタシは見つめる。  ココには本来、バナナの木が実をならしているはずだった。     
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