幸福を願うエラー

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 けれど、バナナの木は枯れ果てた。完璧な環境で育成していたはずなのに。それは、ワタシがこのドームで過ごすようになってから生じた、初めてのエラーだった。どうするべきなのか、どう処理や対処をするべきなのか、分からず、分からず、分からず、ワタシは、けれど、このエラーを修復せねばと思い、ワタシの家にある培養槽の使用を思い立った。しかし、上手くはいかなかった。枯れ果てたバナナの木を培養液に漬け込んでみたものの、一晩後には赤黒くブヨブヨとした物体に様変わり。  ぽっかりと空いた土地を見ていると、やはり、エラーを正さねばという気持ちになり、ワタシは植物園の見回りを早々と終えて、家に戻る。  元のバナナの木とは程遠い、赤黒くブヨブヨとした物体。  元に戻すには、どうしたらよいのか? 全く、全く、全く分からない。データベースを検索しても分からない。試行錯誤するしかない。ルーティンばかりこなしてきたワタシには、一番難しいことだった。でも、やらなければならないと思った。エラーは正す。正さなければ、危険がやって来る。そんな気がする。  培養液の成分を再調整して、ワタシは赤黒くブヨブヨとした物体を再度、浸した。  ソレから、いつも通り壁際の定位置に座り込み、時間が経つのを待つ。  ――二回目もダメだった。  赤黒くブヨブヨとした物体は更に増殖して、膨らんでいる。    三、四、五、……百、二百、三百、……。  培養液は青白んだり、黄ばんだり、エラー、エラー、エラー。  ワタシはエラーを一刻も早く正したくて、ルーティンを効率良くこなすようになった。     
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