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続けて、口を開いた。ぱくぱくと口を動かしている。それに合わせるように、手足もバタバタと動かしている。……クルシイ、のだろうか? ピンク色の唇は、色を失っていく。体表の色もだんだんと白んでいく。手足も動かなくなって、ソレはまた目を閉じてしまった。
枯れ果てたバナナの木が、ワタシの頭をよぎった。
ワタシは、培養槽を思い切り叩いた。
槽は割れて、培養液が床に広がる。
同様に床に落ちたソレを、ワタシは抱え上げる。
壊れないようにそっと、力を抜いて。
ワタシはソレの顔を、指でそっと叩いてみる。反応はない。
どうしたらいいか分からず、ワタシはところどころを指で押してみる。
胸のあたりを押すと、口から液体が飛び出した。と同時に、ソレは唇から声を漏らす。続けて胸を押してやると、また口から液体が飛び出して、やがてソレは空気をめいいっぱい震わせるように声を上げた。ワタシは、どうしていいか分からず、ゆらゆらとソレを抱きかかえたままカラダを揺らした。
しばらくして、ソレは声を上げることをやめ、目を瞑った。
不思議と、もう大丈夫だという安堵感があった。エラーは解消されたのだ。
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