無機質な文字列

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――このユーザは退会されました  小説サイトに掲載されている、人気エッセイの続きを久しぶりに読もうと思った私に突きつけられたのは、無機質な文字列だけだった。  ネットのさよならは、いつも突然だ。その理由をあれこれ考えても仕方ないのかも知れない。そんなことはわかっている。  けれど、それで割り切れないものが、今回はあった。  読んでいたエッセイには、彼女はガンにかかっていて、日本からはるかに遠い国で治療を受けていることが書かれていた。  異国での習慣の違いに戸惑ったり感動したりしながら、懸命に前を向いて生きている彼女の姿が映し出されている。  更新が続く限り、彼女は生きているはず。直接会ったこともなければ、リアルの知り合いでもない、ネットであいさつを交わしただけの人だけど、文字の向こうにはたしかに生きているあなたがいるとわかる。まるで友人のようにさえ感じていた。  だから、続きが読めなくなってしまったことが本当にせつない。  おそらく、止むに止まれぬ事情で退会したのだと思うが、元気で生きていて欲しい。  退会した理由だけでも知りたいと思う。いや、理由なんてどうでも良い。彼女と願わくばどこかで再会できたらと切に願って、私は電子の海に祈りを捧げた。  to be continue...
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