第八章 宇宙でひとつの、ラブ・ソング ~彼方~

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「宇宙、です」  いつか僕の分身が宇宙に行く。進藤は顎が外れるんじゃないかと思うくらい、口を大きく開けている。それを尻目に、僕は指導室を後にしていた。  しかし……アメリカに戻るよりも先に、しておかねばならないことがあった。 「……今日もなし、か」  僕はそれから、数日おきに【子ども図書館】に向かうようになった。もちろん、あの文字の主に出会うためだ。しかし、タイミングが悪いせいか……一度も出会うことはなかった。すれ違っているのか、もうここに来ることはないのか。  一度だけ、このノートを使って待ち合わせをしてみようかと考えたことがある。日時を書き込めば来てくれるのではないか、と。しかし、書き込もうとした瞬間に僕の手がピタッと止まった。もし『気持ち悪い』とか『気味が悪い』とか『ストーカーみたい』なんて思われたら、どうしよう? もしそんな風に思われたら、会話だって弾むはずがない。僕はただ、相手に感謝を伝えたいだけなのに。不安が僕の胸に渦巻き、何か効果的な手段を考えることもできないまま……ただ日々だけが過ぎていった。もちろん、その間に一言ノートに触れる人は小さな子どもしかいなかった。 「最近、よく来るわね」     
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