第二章 いつもどおりの春はこない

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「ずいぶん品のない勘繰りですね。そんな馬鹿な真似、するわけないじゃないですか」  椅子に座り、吐き捨てるように言い返す。 「冗談だよ、ジョ・ウ・ダ・ン! そんな事もわからんのか、お前は」  キッと睨みつけると、進藤は口ごもる。 「それで、今日呼び出したのは何ですか? ……用がないなら、帰りたいんですけど」 「何、文句を言いに呼び出したわけじゃない。何か、学校で嫌なことがあるんだろ? だから学校の成績はこんなに悪いけど、違う会場で受ける模試では本気を出せる。……そういう事なんだろう?」 「……は?」  その検討違いの質問に思わず目を丸くさせると、進藤は同情するように何度も首を縦に振る。 「俺もな、野々口みたいな年頃の時は先生に八つ当たりしたり友達と喧嘩したり……それはそれは色んなことがあったが。でももう心配ないぞ、野々口に悩みがあるなら先生が聞いてやるから。な?」 「そういうのは、一切ないです」  大きくため息をつくと、今度は進藤が目を丸くさせた。額には先ほどに比べるとしわが寄り、じりじりとコイツの中で怒りが燃えているのが分かった。僕はそれを無視して、席を立ってカバンを肩にかけ直した。 「僕の事を思うなら、もう僕に構わないでください」 「……は?」     
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