第二章 いつもどおりの春はこない

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『本当に好きな事って、例えばどういうこと?』  ふと、疑問に感じてしまった。いつもなら気にも留めないような、どうでもいい情報が今回に限っては僕の胸にするりと飛び込んでくる。どこの誰が書いたかもわからない、本当にしょうもない愚痴なのに。  きっと、僕が『本当に好きだった事』を捨てた人間だから、そう思うのかもしれない。  それだけ書き添えて、僕は帰路につく。今日はなんだか、夢見が悪そうだった。  進藤のお節介から逃れようとしているうちに、学校祭があと四週間と迫ってきていた。僕が通うこの高校は変則的で、三年生の受験勉強の差支えにならないように他の学校に比べて時期が早いし、三年生は模擬店を出すことはできない。その代わり、毎年違った催しに参加させられる。ただ、それは僕には関係ないことだ、今までと同じように、帰りのホームルームが終わったらすぐに帰宅する。クラスメイトから文句を言われても僕には関係ない、それすらも無視して。     
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