第二章 いつもどおりの春はこない

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 今年の催し物は、クラス対抗のペットボトルロケット大会に決まったらしい。去年の壁絵コンクールなんかよりはずっとマシだと、誰かがぽつりとつぶやいていた。クラスの議題は、その『ペットボトルロケット』を誰が作るか、その話でずっと停滞している。 「俺受験あるし……模試悪かったから、勉強しないと」 「私だって、放課後予備校だよ!」 「そうそう、大変なのは一人だけって思ないでよ」  互いが互いに、受験や部活、その他もろもろ。理由を付けてはその役割を押し付けられるのを寸でのところでかわしている。不毛なやり取りだと思いながら眺めていると、最前列に座っていた男子が手をあげた。 「俺、やるよ」 「え? いいの、三原? お前受験は?」 「みんなみたいに立派なトコ受けないし、名前書けば行けるっというガッコウ行くつもりだから暇なの」 「まじか、お前が良いって言うなら……」  押し付ける相手が無事に決まったようだ。クラスメイトには興味のない俺でも、あいつのことはよく知っている。三原友次郎、試験の成績は下から数えた方が早く、僕と同じように進藤からお節介を焼かれている問題児。話すこともいつもバカらしくて、つるみたいとも思わない奴。 「でも、三原だけじゃ不安じゃね? 誰か頭いいやつとか……」 「頭いい奴ほど勉強忙しいんだよ」 「三年になると、やっぱりねぇ」 「一人、適任がいるぞ」     
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