第二章 いつもどおりの春はこない

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 教室の後ろで進行を見守っていた進藤が、クラス中に聞こえるほどの大きな声でそう言った。その視線は、僕の方を向いている……嫌な予感しかしない。 「ほら、野々口。いい機会だからお前がやれ」  やっぱり、悪い予感だけはすぐに当たる。僕はそれを無視しようとするが、最前列に座っていたはずの三原が、いつの間にか目の前に立っていた。 「よろしくな、野々口! 一緒に頑張ろうぜ!」  三原が差し出す手を、僕は見ないふりをした。……しかし、その場しのぎで取り繕うことができるほど、三原は甘くなかった。放課後帰ろうとした瞬間、強く腕を掴まれる。 「……何?」 「会議やろうぜ!」 「何の?」 「決まってんだろ~? ペットボトルロケットの作戦会議、他のクラスよりもすげー飛ぶ奴作ってやろうぜ!」 「あほくさ」 「まあまあ、そういうこと言わずに……まずは図書室で資料集めかな? 俺作り方知らねーもん! ほら、行こうぜ!」  腕を掴まれたまま、図書室まで引きずられていく。この無理やり人を巻き込もうとする感じ、進藤そっくりだと僕は大きくため息をついた。  図書室に着いたはいいが、肝心のペットボトルロケットに関する本は一冊残らず全て借りられてしまった後だった。 「ごめんね、他の三年生の子たちが一気に借りて行っちゃって……もう残ってないの」 「あれま」     
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