第一章 春は憂鬱の香り

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『学校に行っても、家に帰っても何も楽しくない。学校では全然友達ができる気がしないし……風邪なんて引くんじゃなかった。それさえなければ、今こんな思いしなくて済んだかもしれないのに。家だってそう、お母さんのピアノのレッスンがどんどんスパルタになってきてる。自分の叶えられなかった夢を人に押し付けるの、やめてほしい。私はもっと、自分が本当に好きな事をやりたいのに!!!』  三つ目のびっくりマークの点を、グリグリとペン先がつぶれてしまうくらい強く書いていく。ちょっとした愚痴のつもりなのに、そこまで気持ちがノートに流れ込んでいたことにその時になって気づいた。 「何書いたの?」  春恵さんがカウンター越しに覗き込んでくる、私は大慌てでノートを閉じた。 「み、見ちゃダメ!」     
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