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「わかったよ」と彼は言う。「もう、きみとは建設的な話し合いはできないということがね」
彼は、最後の腹いせのように、イタリアン・コーヒーをごくごくと飲み、カップが割れてしまうのではないかとおもうほど大きな音を立てて置いた。
「きみは女でよかったな。ぼくが女で、きみが男なら、ぼくは君をなぐって、水をかけているとおもう。でもぼくは男で、きみは女だ。だからがまんする。もう二度と顔もみたくない。さようなら」
わたしだって、あなたのそのへんな髪型も、妙に生白い肌も、みなくてすむなんてうれしいわ。
と、言う前に、彼は席を立って、さっさと店を出て行ってしまった。
周りのひとたちは、いきなり怒鳴りながら店をでた男と、席に残された女を交互にみて、ひそひそと話し始める。
これがもしテレビ番組で、地球上の人々が彼らだけであったなら、伝説に残る視聴率だわ、とわたしは考えながら、彼がすきで、わたしはあまりすきでないイタリアン・コーヒーを啜る。
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