4人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、イタリアン・コーヒーって、なんなのかしら、と思って、インターネットで検索をかけてみた。そうしたら、なんと、エスプレッソと同義なんですって。
その瞬間、なんだか、予想外に驚いてしまって、青天の霹靂、雨雲はすべて水溜り、オリフィスの向こう側へ、行きついた心地だった。
気が抜けて、……ぽすん、とモダンでお洒落なクッションに身を沈めた。
(だったら、エスプレッソって、言えばいいのに)
(そういうところが、いやだったのよ)
街路樹から、ひらり、一枚落葉して、水溜りに浮いている。葉の先が、すこし、枯れている。カサカサとして、葉脈は、まるで老人の骨のように浮き出て、拾っただけで、バリバリと破れてしまいそう。そんな葉が、浮いている。ウユニ塩湖のように青空が映る水溜りに。
それを美しいとも、きたないとも思う。
捨てたものは、彼でもなく、彼との思い出でもない。枯葉一枚分ほどのものだ。わたしが、固執していた、なにか。枯葉一枚分の、つめたく、軽やかな哀しみが、胸を透く。
あらまほしき愛。あらまほしき女のすがた。例えばイタリアン・コーヒーの形をした、わたしが愛した、わたしの幻想。
そんなつまらないものと心中しなくてよかったわ、とわたしはスカートの皺をはたき、今日の晩ごはんはなにを食べようかしらと考えた。
最初のコメントを投稿しよう!